『黄色い星の子供たち』でも扱われた題材。
サラの鍵
(2010;仏)
監督:ジル・パケ=ブランネール(『マルセイユ・ヴァイス』)
出演:クリスティン・スコット・トーマス,メリュジーヌ・マヤンス
★★★★☆(3.8)
1942年、ナチス占領下のパリでユダヤ人一斉検挙が行われた。検挙が行われた日,サラは弟を納戸に隠して鍵をかける。そして両親とともにヴェルディヴ(冬季競輪場)に連れていかれた…。2009年,パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリアは、この事件の取材するうちに、自分の夫と家族が住んでいたアパートで起こった悲劇を知ることとなる…。
ユダヤ人迫害を題材とした作品を見るのは,やはり少し覚悟がいる。
悲しいし,やるせないし,それに人間が嫌いになりそうになるから。
本作は,戦争当時の少女の視線と,現代に生きるアメリカ人女性の視点とが並行するという描き方であるのが特徴的である。
この現代のアメリカ人女性ジュリアを演じた,クリスティン・スコット・トーマスもさることながら,弟を閉じ込めた納戸を開けることに必死になる少女サラを演じたメリュジーヌ・マヤンスと,サラを保護する老夫婦を演じたニエル・アレストリュプが見事だった。
特にメリュジーヌ・マヤンスが,男の子の格好をして汽車に乗ったときに見せる極度の緊張感と憎しみに満ちた視線と,そんな少女を守ろうとするニエル・アレストリュプが見せる頼もしい表情が印象的。
後半は,ジュリアが描かれるシーンが多く,どのようなラストになるのかと思っていたが,「他人の人生に入り込み,人を傷つけた」と,独りよがりの行動を贖うセリフや,子どもの名前を知って泣き崩れる男性まできちんと描き,見るものを納得させた。
ヴェルディヴ事件は,これまでも何度か映画化されているようだ。
歴史は,人間がどうしようもなく愚かであるという事実を物語っている。