観終わった後、小説のような・・と思ったら、監督・脚本は作家だった。
ずっとあなたを愛してる
(2008;仏)
監督:フィリップ・クローデル
出演:クリスティン・スコット・トーマス、エルザ・ジルベルスタイン、リズ・セギュール
★★★★☆(4.2)
15年の刑期を終えたジュリエットは、妹レアの家に身を寄せる。長い空白期間を経て再会した姉妹はぎこちなく、彼女はレアの夫や娘たちとも距離を置く。孤独の中に閉じこもるジュリエットだったが、献身的な妹や無邪気な姪、新しく出会ったよき理解者と触れ合い、少しずつ自分の居場所を見出し始める・・・(公式サイトより)
監督・脚本のフィリップ・クローデルは、『灰色の魂』『リンさんの小さな子』などの著者であり、かつて刑務所や障害児学級で教員経験を持つ。
映画監督デビュー作である本作は、オリジナル脚本であり、小説の映画化ではない。
本作において、観客は第三者の視点に置かれる。
主人公の女性ジュリエットは、どんな罪で15年も刑務所にいたのか、なぜ妹のところに来たのか、また妹のレアは、姉に対してどのような気持ちでいるのか、どんな愛情を持っているのか、ストーリーが進むにつれてそのひとつひとつが見えてくる、そういう構成である。
前半は、画面が暗く、重苦しい雰囲気だが、次第にぼんやりした光が差すようになり、ジュリエットの表情にも光彩が引き立つ。
オープニングでタバコを吸うジュリエットのアップは、皺に影が差しているが、ダンスをしにいく彼女の顔にそれは映らない。
映像に光と影の濃淡をつけているのかもしれない。
主演のクリスティン・スコット・トーマスは、ノーメークでこの役に挑み、ゴールデン・グローブ賞の主演女優賞にノミネートされた(ちなみにこのとき主演女優賞・ドラマ部門を受賞したのは、『
レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』のケイト・ウィンスレット)。
激昂するシーンは多くないが、額にくっきり血管が浮き出るその様は、とても演技とは思えない迫力だった。
ラストですべてが明らかになるが、そこで初めて、ジュリエットが自分の母親を抱きしめることができなかった理由がわかる。
家族の間には、「ごめんね」は不要で、「ありがとう」だけあればいい。
静かだが、心がざわざわとする、そういう作品だった。
たったひとつ難を言うとすれば、子どもの使い方が少々あざといことかな。
でも、おすすめです。