鑑賞したのは7月です。
扉をたたく人
(原題;the Visitor 2007米)
監督:トム(トーマス)・マッカーシー
出演:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン
★★★★★(4.5)
コネティカット州の大学で経済学を教える教授ウォルターは、妻に先立たれて独りで暮らしていた。
学会に出席するため、ニューヨークにある別宅のアパートに行くと、そこにはシリア人のタレクとその恋人でセネガル人のゼイナブが住んでいた。詐欺にあったことがわかった二人は出て行こうとするが、ウォルターは再度呼びいれ、三人で一緒に暮らすことに。
ウォルターはそれまで無気力な毎日を送っていたが、タレクが演奏するジャンベに惹かれ、次第に打ち解け、心の扉を開いていく・・・
アメリカで、わずか4館での公開が、口コミで270館に拡大したというこの作品。
私も周りの人に、久しぶりにいい作品だったと話しました。
アフリカン・ドラムの“ジャンベ”が鍵となるこの作品。ジャンベの奏でる音もとても耳に心地よく、音楽を物語の中心にしたことによって、テーマの重さや主張の押し付けがましさを感じさせない。
9.11以降、扉を閉ざしたニューヨーク。そしてアメリカ。
自由に生きたいという外国人青年の叫びに、不条理を感じながらも、あまりに無力なアメリカ国民・・・
この厳しさと温かさとの対比、アメリカの描き方は、素晴らしいの一言。
政治や法の上に存在する矛盾、不整合、虚偽・・・
ウォルターの思いに、感情移入せずにはいられない。
「何年もまともな仕事はしていない。忙しいふり、働くふり。“ふり”だけなんだ」と話すシーン。今でもこのときの衝撃を忘れません。
そう、私も“ふり”をしているだけなのだ、と、頭をガツンとやられた気分でした。
主人公が大学教授なので、なおさら考えさせられます。
リチャード・ジェンキンスは今作でアカデミー主演男優賞にノミネート。
邦題の「扉をたたく人」には、個人的に満点をあげたいと思っています。とっても文学的!
11月DVDリリース。