早稲田松竹で観ました。
善き人のためのソナタ
(2006;独 原題;DAS LEBEN DER ANDEREN)
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ 、マルティナ・ゲデック 、セバスチャン・コッホ
★★★★☆(4.0)
ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツ。強固な共産主義体制の中枢を担っていたシュタージ(国家保安省)の局員ヴィースラーは、劇作家とその恋人が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられ、盗聴器を通して彼らの監視を始めるが・・・
評判どおりの作品で、非常に満足した。
主人公のシュタージを演じた、東ドイツ出身で実際に監視されていた経験を持つウルリッヒ・ミューエの、揺れ動く信念の表現は素晴らしく、限られたセリフに込められた悲哀と覚悟が、心に伝わってきた(ウルリッヒ・ミューエは今年7月に急死)。
監視対象の劇作家がピアノで弾いた、“善き人のためのソナタ”から、人生に歓びと苦しみを与えられることになるわけだが、後半、郵便の業務に、文字通り黙々と淡々とこなす後ろ姿は、“苦しみ”だったのだろうか、“歓び”だったのだろうか。
かなり評価の高いこの作品。画の暗さ、人々の表情やセリフ、音楽まですべてのバランスがとれていて、娯楽作品としても非常に優れた、まさに秀作。
多くの人の記憶に残る作品となったことは間違いないだろう。