硫黄島2部作、アメリカ側から見た硫黄島の『父親たちの星条旗』に続き、公開。
硫黄島からの手紙
(2006;米)
監督:クリント・イーストウッド
出演:渡辺謙 、二宮和也 、伊原剛志 、加瀬亮 、中村獅童
★★★★☆(4.0)
太平洋戦争末期、戦況が悪化する中、硫黄島には栗林忠道陸軍中将が着任。
日本軍兵士たちは5日で終わるとされていた戦いを、36日間戦い抜いた。
『父親~』とどっちが良いか、ということではない。これは2つで1本の作品になっている。
まず、印象に残ったのが作品の色。
先日ここで書いたように、『父親~』は戦場よりも別のほうに焦点があたっていて、
それによって色鮮やかになっていた。光はカメラのフラッシュ。
それと対照的に、この『硫黄島からの手紙』はまるでモノクロ作品のようだった。
こちらはほとんどが戦場、かつ洞窟の中のシーンで、暗い。光は洞窟の中に灯したランプ。
戦後、硫黄島の土に埋まっていた兵士たちのそれぞれの手紙をもとに話は進む。
そこには家族に綴った思いがある。ただ、イーストウッドはそれを見せるだけでは終わらなかった。
続きはこちら↓(多少ネタバレあり。注意)
負傷したアメリカ兵が持っていた母親からの手紙に書かれていたのも、日本で待つ母親とまったく同じ気持ちだったのだ。
手紙には「誠意(ここがちょっとよく聞こえなかった)を持っていれば正義になる」という言葉がある。
「アメリカ人だ。殺そう」という兵士に対して「お前はアメリカ人の何を知ってるんだ?」という中尉。
そのシーンで、私はやっとこの“2部作”の意義が分かった気がした。
『父親たちの~』を観ていた時は日本軍の蛮行に怒りを覚えたが、今回はアメリカ人の容赦ない殺戮にコノヤロウと思った。
以前、『出口のない海』の感想で「戦争映画の評価は難しい」と書いたが、結局そういうことなんだと思う。
観客は、やはり顔の見えない相手を“敵”とし、“悪”と認識してしまう。
だから、この2部作はイーストウッドがこれまでの戦争映画の「いっぽうが正義で、いっぽうが悪」と捉えかねない描き方を否定した形になっているのだ。
私はこの2部作を積極的に評価したい。
ほぼ全編日本語のアメリカ映画。それをこれだけの完成度に仕上げたイーストウッドはやはりすごい監督だ。(『SAYURI』のロブ・マーシャル、少しは見習え!)
これから観ようと思っている方、できれば『父親たちの~』と『硫黄島からの~』をなるべく間をおかずに続けてみることを勧める。
12月9日公開。