原題はany day now
チョコレートドーナツ
(2012;米)
監督:トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング,ギャレット・ディラハント,アイザック・レイヴァ
★★★★☆(4.0)
1979年カリフォルニア、歌手を目指しているショーダンサーのルディと弁護士のポールはゲイカップル。 母親に見捨てられたダウン症の少年マルコと出会った二人は彼を保護し、一緒に暮らすうちに家族のような愛情が芽生えていく。 しかし、ルディとポールがゲイカップルだということで法律と世間の偏見に阻まれ、マルコと引き離されてしまう。(シネマトゥデイより)
アメリカの各映画祭で観客賞を受賞した作品。前評判もよく,日本でもかなり多くの映画館で上映が決定。
期待は募る… 期待が募りすぎるといいことないのに…
と思っていたのだが,かなり良作だった。評判通り,ルディの歌唱シーンの素晴らしさといったらなかった。
ときどきくすっと笑ってしまうシーンもあるし,一方で裁判のシーンにはこちらの気持ちも熱くなった。
全体的な話の展開もそのスピード感も,いい塩梅だ。
ただ,ルディやポールがマルコに対して愛情を抱いていくプロセスがやや描写不足で,また,保護施設イコール悪みたいなセリフに些か疑問を感じたが,現実はどうだったんだろう。
1979年のアメリカは,ゲイであることが理由で逮捕されるような時代だったらしい。ゲイを中心としてマイノリティの権利獲得を訴えたサンフランシスコ市政執行委員ハーヴェイ・ミルクが暗殺されたのは(84年に製作されたドキュメンタリー映画がアカデミー賞を受賞),1978年のことである。
(ちなみに,男性同士の愛を描いた傑作『ブロークバック・マウンテン』の舞台は1963年のワイオミング州)
ルディとポール,そしてマルコが受けた差別と偏見は,現代はきれいさっぱりなくなっているわけでもないだろう。
ラストにルディの歌う「I Shall Be Released」とポールの淡々としたナレーションがすごく良くてあまりに悲しくて,どうして?なんで?という思いを何度も反芻した。
シネマート新宿ほかにてまだなんとか上映中。是非!