ようやく通常を取り戻し始めた映画館。1席ずつ空けたり飲食を禁止したりした環境も、おおむね元に戻っている。
新宿に109シネマズプレミアムもできて、これから映画館もさまざまに変わっていくのかもしれない。
そんな中、わたしが映画館で観た作品は39本。2021年の28本にえらく反省して少し増やしたよ!もっと行きたいけど!
というわけでお待たせしました!(待ってない?)毎年恒例の私的映画賞,19回目の結果は以下の通り!
最優秀作品賞:
『ベイビーブローカー』(是枝裕和監督:韓)
優秀作品賞:
洋画部門『コーダ あいのうた』(シアン・ヘダー監督:米・加・仏)
邦画部門『マイスモールランド』(川和田恵真監督:日本)
我らが是枝監督作品が今年の最優秀作品に決定!『ベイビーブローカー』は韓国作品で、ソン・ガンホをはじめとした韓国の名優たちがそろった意欲作。赤ちゃんポストを発端とした人間ドラマを描く。意外と”悪人”は多く出てこない。これまで同様、子どもの成長について非常に考えさせられる内容だった。
優秀作品賞洋画部門の『コーダ あいのうた』は米アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞の3つを獲得。2014年公開のフランス作品『エール!』のリメイク作品で、家族の中で唯一の聴者である高校生の女の子の生活を描く。実際に聴覚に障がいがある俳優が少女の父親役、母親役、兄役を演じていることでも話題に。
邦画部門の『マイスモールランド』は、日本で暮らすクルド人一家の日常を捉えた人間ドラマ。難民申請が不認定となったことで17歳の少女が自らのアイデンティティーに苦悩しながらも成長していく物語。
ほかには,韓国作品の『モガディシュ 脱出までの14日間』,邦画部門では『PLAN75』が候補に。
主演俳優賞:ハーヴェイ・カイテル(『ギャング・オブ・アメリカ』)
助演俳優賞:シガニー・ウィーバー(『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』)
主演俳優賞は『ギャング・オブ・アメリカ』で伝説のマフィア王マイヤー・ランスキーを演じたハーヴェイ・カイテル。今年(2023年)で御年84歳!!『スモーク』(’95)や『レザボア・ドックス』(’93)、『ピアノ・レッスン』(’94)から約30年。本作でも圧倒的存在感で、”マフィアのドン”感がすごい。この役ができる俳優は多くないと思う。
ほかには、『オフィサー・アンド・スパイ』のジャン・デュジャルダン、『彼女のいない部屋』『ベルイマン島にて』のヴィッキー・クリープス、『PLAN75』の倍賞千恵子、『英雄の証明』のアミール・ジャディディ、『スワン・ソング』のウド・キア、『エルヴィス』のオースティンバトラーが候補に。まあまあ豊富だな~
助演俳優賞は、こちらも大ベテランシガニー・ウィーバー。『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』は出版社で働く主人公の上司役。こんなにかっこよすぎる上司がいたら確かにビビるな…。それにしてもどうしてこんなにいつまでも美しいのでしょうか。
ほかに候補になったのは、『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』『オフィサー・アンド・スパイ』のルイ・ガレル。
監督賞:アスガー・ファルハディ(『英雄の証明』)
イランの名匠アスガー・ファルハディ。脚本がとにかく素晴らしいが、人間の心理を鋭く描いた良作。マスコミやSNSによる人間の狂騒をここまでサスペンスフルに撮れるのはやはり監督の力か。
もう一人の候補は、やはり『ベイビーブローカー』の是枝裕和。最優秀作品賞と重なるが、どうしたって監督賞には挙げたくなる。新作『怪物』も楽しみ。
脚本賞:『ギャング・オブ・アメリカ』(エイタン・ロックアウェイ)
主演俳優賞と合わせて『ギャング・オブ・アメリカ』が脚本賞。前述したとおり、ハーヴェイ・カイテルの”ドン感”がすごいんだけど、ラストシーンで、観客の予想をはるかに超えた巨大な力に感嘆…となるわけですよ。それから、マフィア王の過去の描写にとどまらず、ランスキーが伝記を書くことを許可した作家のほうにも展開するストーリーとの組み立てが非常に面白く、ラストシーンの驚きをより印象的にさせている。原題は「LANSKY」なのだけど、邦題があまりに凡庸だよね。監督も務めたエイタン・ロックアウェイはまだまだ若く、今後が楽しみ。
そのほかの候補は,監督賞のアスガー・ファルハディの『英雄の証明』(イラン・仏)。どちらも脚本のマジックにぜひ酔いしれて!
撮影賞:『土を食らう十二か月』(日)
水上勉の料理エッセイ「土を喰う日々 わが精進十二カ月」を原案に、沢田研二が主演を務めた人間ドラマ。料理研究家の土井善晴が手掛けたという、劇中の料理の数々と季節のうつろいを映した映像が素晴らしいということでこちらの賞を。
新人賞:ミレナ・スミット(『パラレル・マザーズ』)
我らが(この言葉多いか?)ペドロ・アルモドバル作品の『パラレル・マザーズ』で、赤ちゃんを取り違えた若い母親アナを演じたミレナ。作品自体はやや要素を盛り込みすぎの感があり賞の候補に挙がらなかったが、ミレナのみずみずしいショートカットや幼い表情に新人賞を。
ほかに候補に挙がったうち一人は『リコリス・ピザ』のクーパー・ホフマン。2014年に46歳で亡くなった、あのフィリップ・シーモア・ホフマンの実の息子。どんな俳優さんになるのかな。もう一人は『マイスモールランド』の嵐莉菜。父がイラン、イラク、ロシア、母はドイツと日本のハーフということもあり、本作に抜擢。雑誌Viviの専属モデルで、今後も映画作品に出演するかはわからないけれど、とても印象的な表情を残した。
話題賞:『トップガン マーヴェリック』(米)
その年の作品でもっとも話題になったものを,「ああ,あの年か」とあとから思い出す,記憶のランドマークとして残しておくことを目的としたこちらの賞。2022年は,1986年の『トップガン』の36年振りの続編で、かなりロングランされた『トップガン マーヴェリック』。トム・クルーズ、これで還暦なの!?と誰もが驚いたよね。作品としてもハラハラドキドキの展開で、大画面で見ごたえがあった。旧作を観てから挑んだ人も多かったし、2作連続上映した映画館もいくつかあって盛り上がった!ほかには、スティーブン・スピルバーグ監督が、1961年にも映画化された名作ブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド物語」を再び映画化した『ウエスト・サイド・ストーリー』。いやもう、指パッチン「クール」とか「マリア」とか、歌いだしたくなったよね。
音楽賞:『愛する人に伝える言葉』(仏)
余命を宣告された男性と、その母親の葛藤を描いた作品。カトリーヌ・ドヌーブとブノワ・マジメルの共演も話題になった。余命宣言された患者たちが病状と向き合うためのセラピー。そのセミナーを取り仕切る医師が自らギターを弾き、楽器演奏に乗せて合唱が行われる。人生に音楽は必要だと感じさせてくれる場面。
審査員特別賞:クリント・イーストウッド(『クライ・マッチョ』)
93歳の天才。作品を出してくれるだけでもうれしいのに、ほぼハズレがない。『クライ・マッチョ』も傑作とまでは言えないものの、クオリティの高さを見せつけてくれた。どうかこれからも、天才の作品をひとつでも多く見せてほしい。
ほかに、話題賞『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズや、ドキュメンタリー映画『香川1区』も候補に。小川淳也議員の選挙戦に密着した作品だそうです。
ラジー賞:『men同じ顔の男たち』(英)
大変幸運なことに、わたしは22年のラジー賞はなし!それだけでも素晴らしい年だ…
Yさんのハズレくじがこちら。もはや不快とか。予告編から期待したときのハズレって、なんというか、裏切りを感じるよね。
ここまで書いたように、2022年は,往年の俳優の演技やリメイク作品を存分に楽しんだ一年でありました。
期待をはるかに超えたり期待外れもいいとこだったり…それが映画を観る楽しみでもあります。あのセリフ、あのシーンはどんな意味だったのか…などと考える時間が至福なのです。
今年はどんな作品に出逢えるかな。楽しみです。